TICAについて

■TICAの歴史
 TICAは、1979年夏に設立された。第1回目の理事会年次ミーティングは、1979年8月にジョージア州アトランタにて開催され、第1回目の国際年次総会・アワード晩餐会は、1980年9月の労働の日週末にカリフォルニア州のパサディナにて開催された。TICA独自の遺伝に基づく登録方法は、その原理が科学的根拠にもとづくため、世界中から多くの参加者を集める結果となり、現在では世界最大の遺伝(血統)登録機関となるに至った。TICA会員は、当初試験的な試みとして、ショーの審査の際に、エントリーした猫のステータス、タイトル、血統名をあえてすべて伏せて猫をジャッジするという独創的なジャッジング方式を採用した。この方式は、出陳者に熱烈な歓迎を持って受け入れられた。その結果、純粋にジャッジされる時点における資質のみをもって猫を評価するというこの前例を見ない方式は、のちに理事会によって正式に承認されたのである。

 The International Cat Association (TICA)は、純血種およびハウスホールド・ペット(HHP)猫の世界最大の血統登録機関であり、かつキャット・ショー公認機関としても世界最大の団体の一つである。TICAの使命は以下のとおりである。
TICAの会員が、猫のオーナーやブリーダーとしての責任を十分に果たし、純血種猫の血統の保全およびすべての家猫の健康と福利の推進に一致団結して取り組むよう奨励する。世界で最も正確、かつ最も網羅的な血統登録機関となる。
TICAが公認するキャット・ショーは、プロフェッショナルな方法で純血種および非純血種の猫を奨励し、ショーが出陳者やジャッジや一般観衆にとって楽しくかつ教養を得られるものとする。TICAの会員が、地域社会において以下の活動に積極的な役割を果たすよう奨励する。

*去勢・避妊を責任を持っておこなうことの必要性を一般大衆に広める。
*地元のアニマル・シェルター、および学校や老人・障害者への奉仕プログラムで積極的にボランティア活動を行う。
*猫の健康・福利を保護する法律の整備をめざし市民による法律諮問グループに参加する。
国内および世界中のブリーダー間の友好を促進させる。
繁殖、ショーへの出陳、ブリードの改良、そしてすべての猫の飼育と福利に関する情報を、ブリーダー、オーナー、出陳者および一般大衆に広く伝える。また、各地域および国内で重要とみなされる猫にかかわる問題について、資料や情報を提供する。
猫の病気・健康についての研究を奨励するための財団を設立し、TICAメンバーが健康問題に関する文献リストを容易に参照できるようにする。

 TICA設立の目的は、以下のとおりである。
すべてのブリードの猫およびキャッテリーを登録する。
TICAおよびTICAが公認するキャット・ショーの運営にかかわるルールを公布する。
TICA後援の下に開催されるキャット・ショーを認可する。
すべてのブリードの家猫のスタンダードを確立する。
すぐれた成績を残した猫、およびその猫のオーナーとブリーダーの功績を讃える。
ブリーダー、オーナー、出陳者および一般大衆の知識と関心を深めるために、繁殖、ショーへの出陳、ブリードの改良、そしてすべての猫の飼育と福利に関する情報を広める。
国内および世界中の猫のオーナー同士が、お互いに知識を深めかつ友好な関係を築くことを促進する。

■TICAの理事会について

 世界最大の血統登録機関であるTICAは、理事会の指導のもとに運営される。理事会は、会長、副会長、それぞれの地域のリージョナル・ディレクターで構成される。
役員およびリージョナル・ディレクターは、TICAのメンバーによって選出され、任期は3年である。理事会は、TICAの運営を実施し、TICAの政策・方針にかかわるルールを策定する。ショー・ルール、会則(bylaw)、登録規則(registration rules)に変更を加えるためには、改正案がTICA会員に提示され、会員の投票で可決・否決が決定されなければならない。TICAの全般的な政策・方針に変更がある場合はいかなる事項でも、理事会ミーティングの後で発行されるTICA機関紙"TICA TREND"を通じて会員に告知される。会則、ショー・ルール、登録規則、スタンダード、カラー説明、クラーキング・マニュアル、ジャッジング・プログラムは、それぞれ正式に印刷され、定期的に更新される。TICAの会員ならば誰でも、TICAのルールや政策・方針の変更案を理事会に提出し、検討を依頼することができる。実際今までに、会員の提案に基づいて多くの変更がおこなわれた。

■TICAの会員要件
 TICAの要となるのは、個々の会員である。多くのブリーダー、出陳者、愛猫家の方々が、世界で最も進歩的な血統登録機関であるTICAの会員となり、その活動に参加できるよう広く門戸を開いている。TICAの組織運営に関わる議題について投票権を持つのは、それぞれの会員であり、キャット・クラブではない。また、会員は自分が希望するブリード・セレクションに所属する権利があり、役員に選出される資格を持つ。TICAの会員は、現在世界中で2000名を超える。TICA公認のキャット・クラブがある国は、アルゼンチン、ブラジル、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、ペルー、フィリピン、ポルトガル、プエルトリコ、スイス、アメリカ合衆国である。

 TICA会員が3名以上所属しているキャット・クラブならば、以下の目的をもつ組織であることを条件として、TICAにクラブの認可を申請することができる。
ハウスホールド・ペット(雑種)の猫を含めたすべてのブリードの猫の健康・福利を支援・推進する。
キャット・ショーやその他の行事を開催する、もしくは、家猫に対する関心と知識を高める活動をおこなう。
猫のオーナー、愛好家、ブリーダー間の友好を深め、その利益を増進させる。
TICAのスタンダードを目指したブリーディング、および猫のTICAへの登録を奨励する。
あらゆる動物の愛護を奨励し、動物虐待や動物の不当な扱いを防ぐ努力をする。
家猫の数が必要以上に増えることを防ぎ、望まれずに生まれてきた猫が悲しい結末を迎えることを避けるために、無理のない計画的なブリーディング・プログラムに使われる場合をのぞき、すべての猫の去勢・避妊を奨励する。 TICAの公認を受けたいキャット・クラブは、認可申請書(Application for Charter)に記入した上、当該クラブの会則(TICAのガイドラインに沿ったもの)、認可申請料、クラブ役員・会員の住所氏名の一覧、その他TICA理事会が必要とする情報を添えて、TICAのエグゼクティブ・オフィス(事務局)に提出しなければならない。

■TICAの政策方針
 TICAは、純血種および非純血種猫の世界最大の血統登録機関、かつ世界最大規模のキャット・ショー公認機関の一つとして、純血種・非純血種を問わずすべての猫の振興、愛護、保護に信念をもって貢献する。TICAの信条は、以下のとおりである。
純血種の猫を責任持ってブリーディングすることは、社会に役立つ価値ある行為である。その理由は、個々のブリードに固有な特質を保ち、ブリード固有の身体的および行動的な特徴が引き続き受け継がれることを確実にし、現在のみならず将来の世代においても愛猫家がこのような特徴を賞賛し、楽しむことが可能になるからである。
一般大衆に対すて啓蒙活動をおこなうことや、倫理的なブリーディングをおこない、望まれず不必要で無計画な繁殖を減らすことは、すべての猫の健康・幸福に貢献する。このような活動をおこなうことは、TICAおよびその会員の義務である。
動物愛護団体、アニマル・シェルター、動物保護預り所が、飼主のないペットのために努力し、多くの制約を背負って活動している事情は理解する。しかし、TICAは、健康で飼うことに支障がない動物を安楽死処分することを、反社会的な行動であり生命の軽視を助長するものであると考える。
すべての愛猫家は、他の動物愛好家と協力して、以下のような手段を用いて、動物の過剰な増加を防ぐよう努力すべきである。
*ペットに恒久的なID(訳注:日本では一般的ではないが、ペットに識別票のチップを埋めこむなど)をつけることを奨励することで、迷子になったペットが確実に飼主の元へ戻れるようにし、野良になる動物の数を減らす。
*地方自治体やアニマル・シェルターが各地域でおこなっている野良猫を捕獲し、健康診断し、ワクチンを接種し、去勢・避妊し、もとに戻す活動を支援することで、野良猫の数を減らす。
*去勢・避妊に関する啓蒙活動をおこない、非純血種の子猫およびペットとして販売される純血種の子猫の去勢
*避妊を推進することで、計画的・非計画的を問わず毎年生まれてくる動物の数を減らす。

■TICAの活動と事業
 TICAのキャット・ショーは、アメリカ合衆国、カナダ、日本、ヨーロッパ、メキシコおよび南アメリカで開催される。これらのショーで審査をおこなうのは、キャット・ファンシー(Cat Fancy)界で特に高い評価を得ている会員である。ジャッジになるためには、多岐にわたる実習・訓練を受け、試験に合格して、キャット・ショーにおいて猫の質を評価する資格を習得しなければならない。TICA事務局は、テキサス州のハーリンゲン(Harlingen)にある、近代的なコンピューター化された事務所である。当初は小さなオフィスとして活動を開始したが、今では効率的、プロフェッショナルでスタッフも完備した事務所となっている。TICA事務局は、急速に増えつつある仕事量に対処するため、毎年事務所を拡大してきた。アメリカとカナダ在住の出陳者に対しては、フリーダイヤル(800で始まる電話番号)を設置し、ショーに関する情報を無料で提供している。

 TICAの使命および政策・方針にのっとって、猫福利委員会(Feline Welfare Committee)はTICA理事会の指導のもと、「任意のキャッテリー評価プログラム(Voluntary Cattery Evaluation Program)」および「任意の倫理規定(Voluntary Code of Ethics)」を採択した。これらを設置した目的は、ブリーダーが正しい飼育・キャッテリー管理技術を身に付けるよう、ブリーダーを教育し、情報を与え、ガイダンスを提供することである。任意のキャッテリー評価プログラムは、TICA最優秀キャッテリー(TICA Outstanding Cattery)とTICA優秀キャッテリー(TICA Cattery of Merit)の認定もおこなっている。

■TICAブリード委員会
 TICAブリード委員会は、チャンピオン・シップ対象のブリードおよび発展段階の(TICA公認ではあるがチャンピオン・シップの対象にはならない)ブリードについて、スタンダードに絶えずガイダンスを与え、スタンダードを開発し、改定を加える役目を負っている。各ブリード委員会の委員は、他のメンバーの投票によって選出される。投票の資格のあるメンバーとは、当該ブリードのブリード・セレクションに所属し、かつそのブリードのブリーディングをおこないショーにも出陳しているメンバーに限られる。         

■TICAの刊行物
 TICAの主要刊行物は、TICA TRENDとTICA YEARBOOKの2つである。この他に、会則、登録規則、ショー・ルール、スタンダード、クラーキング・マニュアル、ジャッジング・プログラム、小冊子「子猫を飼いたい方へ(Are You Looking for a Kitten?)」、小冊子「去勢・避妊についてのQ&A」、「任意のキャッテリー評価プログラム」などの出版物がある。これらの刊行物は、TICA事務局に注文して手に入れることができる。TICA TRENDは、隔月のTICA公式刊行物である。その内容は、TICAの最新ニュース、ショーの結果、今後のショーの予定、猫の健康・飼育や繁殖やショー出陳に関する記事、新しくグランドのタイトルを得た猫(チャンピオン、アルター、ハウスホールド・ペット)、アウトスタンディング・サイア/ダムのタイトルを得た猫、リージョナル/インターナショナル・アワードを獲得した猫にスポットライトをあてた紹介記事などである。TICA YEARBOOKは、製本されたハード・カバーの年鑑で、毎年発行されコレクター向けに編集されている。内容は、世界でもっとも優れた純血種猫の写真、インターナショナル/リージョナル・アワードを獲得した猫、アウトスタンディング・サイア/ダムのタイトルを得た猫、スプリーム・グランド・チャンピオンのタイトルを得た猫、トップ・ブリーダーや著名な猫の権威・獣医師・遺伝学者による興味深い特集記事、ブリーダーの広告が含まれる。TICAイヤーブックは、毎年発行数が限定されている。ほとんどの年のイヤーブックが、すでにコレクターズ・アイレムとなっているが、TICAの事務局を通してバックナンバーを手に入れることができるものも少しは残っている。

■TICAアワード(表彰)
 TICAは、成猫、キトン、アルター、HHPキツン、HHPの各々のカテゴリーで高得点を獲得した猫に対して、リージョナル・アワードおよびインターナショナル・アワードを授与する。インターナショナル・アワードは、それぞれのカテゴリーにおける上位20位(HHPキツンのみ上位10位)に入賞した猫に授与される。受賞式は、労働者の日(9月の第1月曜日)の週末に開催される年次総会とアワード晩餐会の席においておこなわれ、TICA理事会のミーティングもあわせてとりおこなわれる。授賞式がこの日のクライマックスであり、何百人もの愛猫家が出席する中でおこなわれ、受賞した猫たちがスライドで紹介される。アワードは、各ブリードおよびカラー部門のベスト、第2位、第3位の猫にも授与される。